海外発、スウェーデン 現地レポート

日本では理想郷としてよく取り上げられるスウェーデンという国ですが、実際あまり観光で来たり、現地の人と一緒に働き生活をしたことがある人はいないかと思います。 そうしたあまりよく知られていないスウェーデンという国を、実際のスウェーデンでの実際の生活や働きぶりを通してレポートしていきたいと思っています。

スウェーデン政府が必要あれば商業施設等閉鎖の可能となる法律が本日から施行開始

 

本日のスウェーデン感染者状況

本日におけるスウェーデンの感染者総数は13,822人、死亡者1,511人、100万人あたりでは1,369人にもなっています。

 

日本の感染者数が9,787人、死亡者190人、100万人あたりでは77人ですので、スウェーデンは人口あたり17倍以上も日本よりコロナ感染が広がっていることになります。

 

スウェーデン政府が必要あれば商業施設等閉鎖の可能となる法律が本日から施行開始

スウェーデンではこれまでほとんどと言ってもよいほどコロナ拡大防止への規制をしてきませんでした。

 

こうした世界の政府のコロナ対策とはまったく違うスウェーデン政府の対応は、海外のメディアからも多く非難されてきました。

 

www.aftonbladet.se

しかしようやくスウェーデン政府は感染予防のため、必要があれば直ちに商業施設の閉鎖等の措置を取ることが可能となる法律を施行し、本日から開始しました


この法律が本日4月18日から6月30日まで適用され、コロナウイルス危機に関連する措置のみ適用されることとなります。

 

スウェーデン政府が感染予防のため必要があれば直ちに取ることができる措置には,以下が含まれます。


・集会の一時的な制限
・ショッピングセンター等の商業施設の一時的閉鎖
・社会的・文化的施設(バー,ナイトクラブ,レストラン,カフェ,ジム・スポーツ施設,図書館,美術館等)の一時的閉鎖
・交通又は港,空港,バス及び鉄道駅等インフラ施設閉鎖又はその利用制限
・医薬品又は医療・防護機器やその他の医療機器の地域間における再分配
 

しかしお間違えしないで頂きたいのは、必要があれば閉鎖等の措置を取ることが可能

というだけで、政府は閉鎖や規制をしたと公表したわけではありません


そのためいまだにスウェーデンで特に規制はされてないのです


本日よりスウェーデン政府の権限が増し、商業施設などの閉鎖も可能となる法律が開始した事は、日本でいえば緊急事態宣言が施行されたような感覚のはずです。

 

にもかかわらずスウェーデン政府はまったく新たな規制を出してはいません。


さらに多くのスウェーデンメディアでは、この事を本日のトップ記事で取り上げていないのです。その代わりにいつものように、公衆衛生局のアンダーシュ・テグネルやトランプ大統領の話が一面を飾っています。


何か日本とは違い何か違和感が湧いてこないでしょうか?

 

コロナ感染拡大防止の責任

3月30日のスウェーデンメディアであるザ・ローカルによれば、スウェーデンの憲法で公的機関は政府から独立していると定められています。

 

f:id:globaljourney:20200419013456p:plain

ザ・ローカル ローベン首相と公衆衛生局アンダーシュ

https://www.thelocal.se/20200330/whos-actually-in-charge-of-swedens-coronavirus-strategy

 

その目的は2つあり、1つは公的機関の決定は専門家の知識にもとづいて決定される事、2つ目に政府が公的機関の意思決定に影響を与えられないことが腐敗を制限するためとのことです。

 

そしてこのスウェーデンにおける政府と公的機関の権限の分割は17世紀にさかのぼり、公務員は政治面からの圧力から保護されるべきであるという強い考えがあるとのことです。

 

今回のコロナ危機でにおける責任は明白であり、政府は全体の主導権を握る役割を担っているが、常に機関の専門知識と独立性を尊重していると記されています。


そのため政府はこれまでの長いスウェーデンの伝統や慣習もあり、これまで規制が出せなかったとのことです。


しかしこの記事の中で、ウプサラ大学の政治学科のベンニッチ・ヴョ-マン教授は、実施されたコロナ措置への最終的な責任と説明責任は、政府がもっていることは明白であると語っています。

 

なのでいくら政府と公的機関に権限を分割していようが、最終的な責任は政府がもっていることは明らかなのです。

 

なおかつローベン首相は、3月22日の国民への演説でコロナ感染拡大防止は、国民一人ひとりの責任であるとまで発表しています。

 

もし同じようなことを日本の安倍総理が発表したら、日本人はどう思うでしょうか?

どう考えても政府責任を回避しているように感じないでしょうか?

 

日本よりたちの悪いスウェーデンの伝統

ところで日本人の多くの人は、日本には古い伝統や慣習があり、非効率な働き方を生み出していると考える方が多いかもしれません。

またこうした古い伝統や慣習はヨーロッパにはなく日本固有のものであるように感じます。

 

しかしこのコロナ危機下のスウェーデン政府の対応からもわかるように、スウェーデンは17世紀から続く伝統・慣習もあるため公的機関に口を出さないという口実を使っています。

 

スウェーデンでの人口当たりの死亡率を比較すると、本日のスウェーデンの死亡者率は日本の75倍も多いことがわかります。

 

このようにスウェーデンでは毎日のように多くの人たちがコロナで亡くなっている現実があるのです。

 

しかしそうした現実をスウェーデン政府は目にしつつも、伝統や慣習で政府が公的機関に口を出せないという話は、仕事効率が悪いという話どころではないはずです。

 

日本人は日本だけが伝統や慣習をもち閉鎖的な国と思いがちですが、実はスウェーデンもさらに閉鎖的な国であることがみえてきます。

 

今後の政府によるコロナ規制実施の予想

4月7日の新聞エクスプレッセンによると、スウェーデンの政府が商業施設などの閉鎖ができる法律を決定したのは、4月7日であり、今から1週間以上も前のことになります。

 

www.expressen.sehttps://www.thelocal.se/20200408/explained-what-swedens-new-government-powers-actually-mean-in-practice

 

しかし法律が本日から施行開始されたにもかかわらず、なぜこうした緊急事態下においていまだ政府は何の規制もを実行しないのでしょう?


私が考える1つの理由として、スウェーデンでは何でも日本と比較にならないほど何をするのも遅いことがあります。

 

1つの例として、スウェーデンでは病気になったても、専門医に会うには2,3ヶ月かかります。ときには数年待っても医師に診察してもらえないこともあるのです。

 

日本人には信じにくいかもしませんが、スウェーデンでは医師に会えず亡くなる人もいます。またガンなどの発見されても手術までまたされて亡くなってしまう人がいるほどです。

 

実際に、スウェーデン保健専門家協会の会長シネバ・リベイロ氏も「スウェーデンでは患者が診察待ちすべきではない。しかしその事態は現実に起こっている。診察待ちで死ぬ患者もいる。本当にひどい話だ」と看護師不足により病院待ち時間が長く、死亡する人がいることを、2018年の新聞エクスプレセンで語っています。

 

www.expressen.se

このように普段から人の生命・健康に関わる重大なことでも、スウェーデンでは対応が非常に遅いのです。


そのためこの法律が本日から施行されましたが、実際に閉鎖などの規定が出されるには、1ヶ月ほど後になると考えられます。

 

もしくは他のヨーロッパ諸国が行うような規制を出さないようするため、段階的に閉鎖を行うと考えられます。


その大きな理由としてスウェーデン政府が企業利益を最優先にしているため、経済に影響与える措置を避けていると考えられるのです。

 

ただスウェーデン政府は海外メディアから規制しない事を非難されています。そのため建前上法律を制定することで、非難の一時回避をし、実際の規制をするまでの時間稼ぎをしていると考えられます。


これはあくまで私の予測です。


なのでスウェーデン政府が今後実際にどのような措置をとるかはわかりませんが、今後も政府の動向を追い続けていこうと考えています。