メディアが日本とスウェーデンのコロナ戦略を比較報道する必要性への疑念
- 本日のスウェーデン感染者状況
- 日本とスウェーデンのコロナ拡大防止への責任の違い
- 日本とスウェーデンの高齢者死亡数の違い
- 週刊誌ニューズウィーク:スウェーデンのコロナ死亡率がアメリカや中国の2倍超に
- 日本とスウェーデンのコロナ戦略を比較する必要性への疑念
本日のスウェーデン感染者状況
本日におけるスウェーデンの感染者総数は23,216人、死亡者2,854人、100万人あたりで感染者は2,299人、死亡者は283人にもなっています。
日本の感染者数が15,253人、死亡者556人、100万人あたりで感染者は121人、死亡者は4人です。
スウェーデンにおける人口あたりの死亡数は70倍以上も日本より高いことになります。
日本とスウェーデンのコロナ拡大防止への責任の違い
スウェーデンは世界でも唯一といわれるほど、具体的なコロナ規制をださない国です。
ときどき日本のメディアでは、「自粛」という点でスウェーデンと日本が同じだと報道されています。
しかし本当にスウェーデンと日本が同じなのでしょうか?
まず大きな違いは、日本ではコロナ感染防止対策の責任は政府が持っています。
しかしスウェーデンでは、スウェーデンのローベン首相が、「コロナ感染拡大防止は国民一人ひとりの責任」だと公言しているのです。
そしてスウェーデン公衆衛生局は、コロナ感染拡大防止のための「勧告」を発表していますが、これはあくまでアドバイス程度のものであり従う必要はないのです。
また日本で批判は相ついでいますが、国民1人あたりに10万円の支給金、マスクの支給、などの具体的な対策が講じられています。
しかしスウェーデンでは国民への支給金はありません。
またマスクの配布どころか、多くのヨーロッパ諸国でもマスクの使用を始める中、いまだマスクはコロナ予防にならないと発表しています。
そのため老人ホームでマスクを使用しない介護者や面会者がおり、老人ホームでの感染拡大が起きたと、4月7日の公共テレビSVTでは報じられています。
ただ5月3日のSVTによれば、コロナ感染拡大を防止の為高齢者向け住宅への訪問禁止が禁止になっていますが、ファルケンベルク市では高齢者との面会がまだ可能です。
そのためにファルケンベルク市では、ガラス越しで面会できるような場所を設けているところもあるとのことです。
日本とスウェーデンの高齢者死亡数の違い
しかしスウェーデンでは高齢者の死亡率が非常に高い実態があります。
ドイツの統計データ企業であるスタティスタの統計データを使用し、日本とスウェーデンの高齢者死亡数を比較したものが次のようななります。
スウェーデンでの年齢別死亡者数
60歳から69歳:223人
70歳から79歳:674人
80歳以上: 1,902人
60歳以上の高齢者死亡数合計:2,799人
日本での年齢別死亡者数
60歳から69歳:38人
70歳から79歳:90人
80歳以上: 199人
60歳以上の高齢者死亡数合計:327人
スウェーデンと日本の高齢者死亡数比較の結果
60歳以上の高齢者の死亡数の比較
結果:スウェーデンは日本の8.5倍以上高い
人口あたりの60歳以上の高齢者死亡数の比較
結果:スウェーデンの60歳以上の高齢者死亡数は日本の105倍以上も高い
週刊誌ニューズウィーク:スウェーデンのコロナ死亡率がアメリカや中国の2倍超に
こうした死亡者数の多いスウェーデンに対し5月1日のニューズウィークでは、
「「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に」というタイトルで記事が書かれています。
その記事によれば、
「ロックダウンに頼らない独特の新型コロナウイルス対策で知られるスウェーデンで、感染者が増え続けている。しかも米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によれば、死亡率は4月30日時点で12%超。これは、感染者が1000人を超える国の中で6番目に高い割合で、現在の感染拡大の中心地で死者数も最多のアメリカ(約5.8%)、ウイルスの発生源とされる武漢市がある中国(約5.5%)と比べても2倍以上の高さだ。」
スウェーデンでは全国的な移動規制や外出制限をしないという独自路線を貫き、その緩い対策が世界的にも論議を呼んでおり、
「より多くの人をウイルスにさらすことで集団免疫を獲得する、というスウェーデンだけの「人体実験」には国内から反対も出始めている」と記しています。
そしてドナルド・トランプ米大統領は4月30日朝、公式アカウントにツイートで
「封鎖措置を取らなかったスウェーデンは、その決定の手痛い代償を払っている」
「同国では30日の時点で、死者数が2462人にのぼっている。近隣のノルウェー(207人)、フィンランド(206人)やデンマーク(443人)よりもずっと多い。アメリカは正しい決断を下したのだ」と記しています。
日本とスウェーデンのコロナ戦略を比較する必要性への疑念
このように日本のコロナ規制が、「自粛」という言葉上だけの点でスウェーデンのコロナ規制と同じであると報道されることもあります。
しかし実際にはコロナ感染防止に対する責任や具体的な対策・規制、また結果として現れている死亡者数から、日本とスウェーデンのコロナ戦略は根本的に違うものなのです。
また日本のメディアではスウェーデンだけが、ロックダウンをしていない国のように報道されています。
しかし実際にはフィンランドもノルウェーもロックダウンはしていません。
フィンランドでは、10人超の集会の禁止、公営博物館・劇場・文化施設・図書館やスポーツ施設の閉鎖、学校や大学の閉鎖をしています。
しかし外出は日本と同様に今までどうり可能で、必要なければ外出しないように「自粛」を呼びかけています。
日本も世界でいち早く学校閉鎖をした国です。
そう考えると日本のコロナ政策はフィンランドが行うコロナ政策に近いものだと考えられるのです。
ではなぜ日本のメディアではあえて、スウェーデンのコロナ対策と日本のコロナ対策を比較する必要があるのでしょうか?
日本のメディアでは、何かあれば「スウェーデン=正しい」として報道し、視聴者をある一定の思考に誘導する思惑があるようにも感じとれます。
スウェーデンの政策が良いか悪いかはともかく、非常に多くの高齢者の死亡者がでているスウェーデンです。
これまで私たち社会を築いてきてくれた高齢者の方々が、少しでもお亡くなりにならないことを願うばかりです。