海外発、スウェーデン 現地レポート

日本では理想郷としてよく取り上げられるスウェーデンという国ですが、実際あまり観光で来たり、現地の人と一緒に働き生活をしたことがある人はいないかと思います。 そうしたあまりよく知られていないスウェーデンという国を、実際のスウェーデンでの実際の生活や働きぶりを通してレポートしていきたいと思っています。

3月30日 スウェーデンのマスコミの偏向報道

この1週間スウェーデンの天気は晴天が続き温かいときには気温が10度くらいにもなり、スウェーデンでも桜が咲きはじめてきました。そのため街ではコロナが蔓延しているとは思えないほど、いまだにのんびりと散歩をしている人たちの姿を多くみかけます。

 

スウェーデンは人口1千万人しかいない小国家です。しかし本日でのコロナ患者数は3700人にもおよび、死者数も110人、100万人の人口当たり281人にもおよびます。


日本では1866人、死者数54人、100万人あたり15人ですので、スウェーデンのコロナが日本と比較にならないほど蔓延している状況がわかります。

 

しかしスウェーデン政府はいまだに対策をうちだそうという気はありません。本日決めたのは、5月1日のメーデーの日にだけ労働者のマーチングを禁止したのみです。3月27日に禁止した50人以下の集会を禁止するという規制も、公共の集会に限りプライベートの集会には適用されないため、コンサート、フィットネスクラブなどほとんどの施設は通常どうり運営しています。

 

もちろんスウェーデン人がコロナ感染を心配していないわけではありません。しかし政府やスウェーデン公衆衛生局が規制をださないため、プライベート施設もなかなか閉鎖に乗り出せないのです。


スウェーデンで大手のフィットネスクラブであるSATは、2週間ほど前に自分たちの判断でフィットネスクラブを閉鎖しました。おそらくSATとしては、政府が他の国と同様にフィットネスクラブの閉鎖を決定すると考えていたのだと思います。しかしその後もスウェーデン政府は何も規制しないため、会員が他のフィットネスクラブに流れることを恐れてか、再度SATはオープンされてしまいました。
このようにスウェーデン政府が何の規制も行わないため、プライベートの企業も自分たちからビジネスを停止することが難しい状況なのです。

 

こうしたまったくというほどコロナ対策を行わないスウェーデンは、ヨーロッパ諸国だけにとどまらず、世界でも唯一という国であり、多くの海外メディアから非難を浴びています。

 

しかしスウェーデンのメディアの多くは政府保護する報道が非常に多いのです。
たとえば3月25日に報道された公共テレビSVTでは、3月の与党社会民主党の支持率が2.4%増加して、現在急激に台頭している左党のスウェーデン民主党と比較し支持率が高いことを強く報道しています。

 

 

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3月25日 公共放送SVTによる与党社会民主党よりの偏向報道

また若い女の子と男性の2人のみインタビューを行い、2人が政府を強く信頼していると報道しています。

 

一般的によく知られていませんが、スウェーデンの公共放送SVTには多くの社会民主党の党員がSVTの役員メンバーとして在籍しています。そのためSVTでは政府よりの偏向報道が非常に多いのです。

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3月25日公共放送SVT 政府支持者のインタビューしか報道しないSVTの偏向性


また地元オンライン・メディアのザ・ローカルでは、なぜスウェーデンがコロナの蔓延する中で平気でいられるのかを科学的に説明するという記事が掲載されています。

 

https://www.thelocal.se/20200328/explaining-the-science-behind-swedens-relaxed-coronavirus-approach

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The Local「Explaining the science behind Sweden's relaxed coronavirus approach」28 March 2020


その記事の中では、「コロナ感染が子どもたちの間で急速に広がっていますが、コロナ合併症は子どもたちでは比較的まれです。しかし長期的な街や学校の封鎖は経済に大きな影響を与える可能性が高く、閉鎖により人員不足がおき、将来的に医療に大きな影響を及ぼす可能性がある。これは結局コロナの拡大が短期的に及ぼす影響よりも、長期的にみれば閉鎖よりも大きな多くの死と苦しみを引き起こすかもしれない」とルンド大学の遺伝疫学教授のパウル・フランク教授は語っているのです。

 

一見、正論のようにも取れます。しかし現在急速にコロナが拡大しているのを防がなければ、イタリアのように医療崩壊が早期に訪れるのは目に見えています。そのため世界中の政府や専門家が、都市や学校、多くの施設の閉鎖をしているのです。今回のコロナ拡大は世界中の問題であり、どの国々も同じ状況下にあるというのにもかかわらず、この教授も科学的な理由と言いながら、屁理屈にしか聞こえない回答をしています。

そして仮にもし彼の意見が正しいならば、世界中の専門家が間違った判断していることを主張していることとなるのです。

 

さらにいえば政府やスウェーデン公衆衛生局は、子どもたちにコロナが感染している事実を知っていでさえ、学校閉鎖も行わない事を認めていることになるのです。日頃は人道主義、子ども保護を謳っているスウェーデンとはまったく真逆の主義であります。しかしこの記事でもそうした人道主義とはかけはなれた政府の対応について、まったく触れてはいません。

 

また実はこのルンド大学、毎回政府を擁護する記事によくインタビューされている大学なのです。そのためメディアが何か政府支持の記事を記載したい場合は、この大学に尋ねている可能性が高いのです。

 

そのためこの地元オンライン・メディアのザ・ローカルの記事でも、このルンド大学に話を聞けば、政府保護の返答が返ってくるとはわかっていて、あえてインタビューをしている可能性が高いのです。

 

ただこのブログを読まれた多くの方は、スウェーデンは2019年の世界報道自由度ランキングで世界3位であるため、まさかスウェーデンがそんなことはずはないと考える方は多いかもしれません。

  

しかし日刊新聞SvD によるとSVTの理事会には3、4人の社民党員がいて、SVTを所有するスウェーデン・ラジオ経営基金の理事も5人の社民党員がいるとのことです。そのためSVTは与党の社民党に政治的に偏っているとSvDは指摘しています。そのためSVTでは政府を非難する報道がされないのです。

 

www.svd.se

また国境なき記者団 もSVTと公共ラジオSRは政府のプロパガンダ機関になるかもしれないと警告をしているほどなのです。

 

nyheteridag.se

また他のメディアも政府を非難する報道は積極的にすることはありません。中国やロシア、北朝鮮などの社会主義国では、メディアによるプロパガンダがよく行われているのは知られています。

しかしスウェーデンでも政府が大手メディアの大株主となることで、政府がメディアに介入して、政府に都合のよい報道される実態があります。

 

そして日本や世界中でもスウェーデンが人権保護や環境に力をいれている報道がされ、スウェーデンはなんと清らかでクリーンな国であるのだとイメージする人は多いはずです。
しかしこのイメージも政府がメディアをうまく利用し、世界にスウェーデンのよいイメージを売り込む作戦の1つなのです。


もしそれでもまさかそんなはずはないと疑問に感じる方がいれば、なぜスウェーデンが世界でも有数の軍事輸出大国だという報道が、世界のメディアでなされないのかを考えてみてください。

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スウェーデンのリンドシッピング市にあるサーブ製戦闘機グリペン工場


アメリカのビジネス誌ビジネス・インサイダーによれば、スウェーデンは人口当たりの軍事輸出額でイスラエル、ロシアに次ぐ世界第3位の軍事輸出額であり、軍事輸出総額でも世界11位つける軍事輸出大国なのです。

 

www.businessinsider.com

そして日本を含め世界の多くの人達は、スウェーデンのメディア戦略にうまくのせられているのです。

そのためスウェーデンに関する多くのニュースは、難民の受け入れを多く行う平和主義の国としての報道や、環境活動家のグレッタ・トロンベリーさんのような環境国家というイメージの良い報道しかされないのです。

 

今回のコロナ感染問題でもスウェーデンはメディアをうまく利用し、政府の都合のよいニュースを国民に報道しています。

ただあまりに人の生命より経済を重視し、まったく対応を行わないスウェーデン政府に、さすがのスウェーデン人も苛立ちをおぼえ、世界のメディアもこの異常さに気づいてスウェーデン政府の対応を非難している状況となっているのです。