結局有言実行されなかった、スウェーデン政府の1週間10万人のコロナ検査発言
本日のスウェーデン感染者状況
本日におけるスウェーデンの感染者総数は30,143人、死亡者3,679人、100万人あたりで感染者は2,987人、死亡者は365人にもなっています。
日本の感染者数が16,285人、死亡者744人、100万人あたりで感染者は129人、死亡者は6人です。
スウェーデンにおける人口あたりの死亡数は60倍以上も日本より高いことになります。
スウェーデン政府が週に10万回のコロナ検査公言は結局未達成
4月17日の公共テレビSVTによると、スウェーデンのローベン首相が、数週間後に一週間で5万人から10万人のコロナ検査を実施すると公表しました。
4月17日の公共テレビSVTによると、スウェーデン政府は数週間後に、1週間で5万人から10万人のコロナ検査を実施すると公表しました。
スウェーデンの人口は1,023万人です。そうすると1週間で人口の約1%の人がコロナ検査を受けられることになります。
コロナ検査を大量に実施していると報道されるドイツでさえ、1週間で35万人、人口の約0.4%の人しかコロナ検査を受けれていません。
しかしスウェーデンで1週間に10万人の検査実施は、ドイツの2倍以上のコロナ検査を実施していくことなのです。
そのため私の4月19日のブログで、スウェーデンがドイツの2倍以上のコロナ検査を本当に実施できるのか疑問点を記しました。
あれからすでに数週間である2,3週間はとうにすぎ、1ヶ月が過ぎてしまいました。
そして5月8日の公共テレビSVTでは、5月中旬(15日)までだろうとの記載もあったため、5月15日過ぎまで実際に10万人の検査が可能であるのか様子をみてみました。
それでは政府が週に10万人のコロナ検査実施はできたのでしょうか?
5月16日のSVTによれば、先週には29,400人のコロナ検査実施されたが、
政府が発表した10万人には程遠く、3分の1以下しか実施されていないと報じられています。
政府の検査コーディネーターであるハリエット・ウォールべり氏は、1週間に10万人のコロナ検査実施できなかった理由を、
「政府の目標を達成していない理由として、検査ラボで検査結果を登録システムがデジタル化されていないためだ。またもう1つの理由として、サンプルが採取されてから検査ラボに輸送するまでに時間がかかるためだ」と発表しています。
ただ元々4月17日に政府が1週間で10万に検査すると発表した時点から、政府は具体的な検査方法がなく検討中であると発表していました。
そのため検査登録システムがデジタルでないこと、輸送手段が整備されていないことなど、4月17日に発表したときから初めからわかっていたのではないでしょうか?
それにもかかわらず政府は1週間で10万人のコロナ検査を実施すると、実現不可能である数字を堂々と国民や世界に向けて発表していたのです。
政府の有言実行でないアピールだけの発表
ここで私が言いたいのは、10万人の検査数が少ないとか多いとか言いたいのではなく、1週間に10万人もの検査は実行がほぼ不可能とわかっていながらも、
国民や世界に向けて堂々とアピールをしており、実際に有言実行していないスウェーデン政府の実態を知っていただきたいのです。
そしてスウェーデンでは実現不可能な政策でも、国民や世界に好印象を植えつけるためのアピールは積極的にするものの、実際に実行せずとも過去の発言に責任をもつことないため、実現不可能な発言でもよくされます。
ときにはいつの間にか発言とは真逆の政策に切り替わることも平気で行われることもあるのです。
1つの例として3月15日に政府が国境閉鎖しないとした決定です。
しかしなんとたった2日後の3月17日に国境閉鎖を決定します。
さらにスウェーデンの公衆衛生局の発言にもあてはまります。
当初、公衆衛生局は集団感染がスウェーデンのコロナ戦略ではないと繰り返し発言していました。
しかし死者数が多くなるにつれ、いつの間にか集団感染がスウェーデンの唯一の戦略であると語るようになっています。
そしてこのように過去の発言とはまったく反対の発言をしたとしても過去の発言には責任追求もされず、責任も取らないまま、いの間にか問題が忘れるか、発言と反対の事を実施していることもしばし起きているのです。
コロコロと変わる原発方針
またこのように過去の発言に責任をもたないのは、今回のコロナ危機に限ったことではありません。
1つの例としてスウェーデンの原発方針があります。
スウェーデンは1979年に起きたアメリカのスリーマイル島原子力発電所事故を受け、1980年に世界に先駆け「2010年までに全原発を廃止する」と国民投票で決定した国でした。
しかし多くの専門家から、脱原発による電気料金上昇と二酸化炭素排出量の増加の問題を考慮するべきと指摘をうけ、1998年に政府は方針を転換し、2010年以降も原発利用続行を決定しました。
ただ政府は2040年までに水力を含めた再生可能エネルギーからの電力供給を100%にする目標を立て、徐々に原子力を廃止する予定とします。
ただ原子力発電に課税をし、その税収分を再生可能エネルギー支援に当てる政策に変えたのです。
しかし2016年6月に政府はまたまた政策を変え、既存の原子力発電設備10基の建て替えを電力会社に認め、原子力発電への課税も廃止することを決定します。
結局、全廃決議をした1980年以降には、1999年と2005年にたった1基づつが停止されたのみで、現在でも10基の原子炉が稼動しているのです。
このようにスウェーデンでは原発方針にでさえ、過去の発言に責任をもつことなく、その都度コロコロと方針を変え原発の利用を続けているのです。
また政府は2010年に決定した「2040年までに再生可能エネルギーからの電力供給を100%にする」とした目標も単なる目標であり、その年までにすべての原発を停止するわけではないとさえ述べているのです。
さらにスウェーデンエネルギー大臣は「これは伝統的なスウェーデン流の譲歩である」とも語っています。
これからわかるようにスウェーデンでは過去の発言に責任をもつことはなく、その場その場で一番好印象を受けるような発言をして、国民や世界にアピールしていることが多々あるのです。
そのためスウェーデンの情報が日本のメディアで報道されるときも、過去の発言に責任をもたないという日本とは大きく違う倫理観があることを頭にいれる必要があります。
もし日本がスウェーデンの政策を参考にしていく場合、一時的な発言だけでスウェーデンの政策を判断するのではなく、長期的な発言に矛盾や問題はないか十分に検討していく必要があるのです。