海外発、スウェーデン 現地レポート

日本では理想郷としてよく取り上げられるスウェーデンという国ですが、実際あまり観光で来たり、現地の人と一緒に働き生活をしたことがある人はいないかと思います。 そうしたあまりよく知られていないスウェーデンという国を、実際のスウェーデンでの実際の生活や働きぶりを通してレポートしていきたいと思っています。

またもやリストラ!1,000人のリストラ発表したスウェーデンの自動車会社ボルボ・カーズ

 

本日のスウェーデン感染者状況

本日におけるスウェーデンの感染者総数は19,621人、死亡者2,355人、100万人あたりで感染者は1,943人、死亡者は233人にもなっています。

 

日本の感染者数が13,614人、死亡者385人、100万人あたりで感染者は108人、死亡者は3人です。

 

スウェーデンにおける人口あたりの死亡数は77倍以上も日本より高いことになります。 

 

またもやリストラ!1,000人のリストラ発表したスウェーデンの自動車会社ボルボ・カーズ

スウェーデンにある自動車会社ボルボ・カーズはコロナの影響で一時生産を停止していましたが、現在再度製造を開始しだしていました。

 

しかし4月27日の新聞エクスプレッセンによると、スウェーデンにある自動車会社ボルボ・カーズは、夏までに1,000人の従業員の解雇を発表しました。

 

そしてスウェーデンのシェーブデ市とトルスランダ市にあるボルボ・カーズの工場で、 9月までにリストラが実施されるだろうと報道されています。

 

ボルボ・カーズの報道官ステファン・エルフストロムによると、

「もし車の販売数が減るならば、製造ラインに問題が生じてくるのは明らかだ」と、販売できなければ従業員を解雇するのは当然かのように語っています。

 

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このボルボカーズのリストラだけではなく、新聞SvDによれば3月23日に自動車会社ボルボが全ての契約社員5,000人の解雇を発表したばかりでした

 

また3月15日の新聞DNによれば、航空会社SASは、従業員の90%にあたる1万人の解雇を発表しました

 

4月14日の公共テレビSVTによると、1週間だけでスウェーデン国内の6,600人が企業から解雇通知を受けたと報道され3月1日から4月14日までの約1ヶ月半だけ56,000人もの解雇通知を受け、82,000人が職を失ったと報道されているのです

 

実に多くのスウェーデン企業がコロナ危機で、即座に従業員の解雇を行っていることがわかります。

 

スウェーデン企業と日本企業との比較

日本企業も今回のコロナ危機により大ダメージを受けています。

 

しかしトヨタ自動車は、国内で大規模な生産ラインの休止に踏み切りましたが、今も解雇はしていません。ホンダ、三菱自動車もリストラはされていません。

 

フランスの自動車会社ルノーと資本提携をしている日産自動車以外の日本の主要自動車企業では、工場を停止し一時帰休はするものの、従業員の雇用は守っているのです。

 

また日本の航空会社のJALやANAも同様に、運休や一時帰休をはじめるなどはするものの、リストラは行っていません。

 

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4月22日の日経ビジネスでのインタビューでトヨタ自動車の豊田章男社長が「師」と仰ぐ人物、伊那食品工業の最高顧問である塚越寛は、

 

従業員を解雇することはこれまでなかったし、これからもありません。どんなに苦しくとも、経営者の責任として一度採用した以上はその人の幸せを考え、雇用し続けるのが当然です。」

 

「企業は何のために存在しているのか。この点について勘違いしている人が多いですね。企業の目的は経営者の虚栄心を満たすことではなく、いい会社にして皆で幸せになることこそが目的です。だからこそ、経営者は人間としてどう生きるのが正しいのか、それにともなって会社はどうあるべきかを考えなければなりません。」と語っています。

  

反面ボルボ・カーズの報道官ステファン・エルフストロム氏は、

「もし車の販売数が減るならば、製造ラインに問題が生じてくるのは明らかだ」とリストラを当然のように進めています。

 

この2人の発言と比較しても、日本とスウェーデンの従業員を守ることへの理念に大きな違いがみえるのではないでしょうか?

 

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4月22日 日経ビジネス 伊那食品工業の社是「いい会社つくりましょう」

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真っ先に従業員のリストラを行うコスト重視スウェーデン企業

しかしスウェーデンでは今回のコロナ危機だけではなく、常日頃から少しでも企業は経営難となれば、リストラを避けて経営を見なおすわけではなく、真っ先に実行されるのは従業員のリストラなのです。

 

そして現在のコロナ危機でも、いつものように従業員の雇用を守ることはなく、真っ先に従業員のリストラが実行されています。


それでは現在のコロナ危機の間に、国民にはスウェーデン政府から手厚い保護があるのかというと、スウェーデンではいまだに国民を守るためのコロナ拡散防止規制もなく、日本やアメリカのような国民への支給金もありません


しかし反面スウェーデンにコロナ危機が直面し、政府がは3月4日に真っ先に実行した政策は、国民を守る政策ではなく、企業救済の法律制定だったのです

 

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今回のコロナ危機を通しても、スウェーデン政府国民救済よりも、企業救済を第一にしていることがよくわかるのです


また企業も自己救済にためであれば、従業員が路頭に迷おうが、容赦なく従業員の解雇をためらいません。

 

こうした話を聞き、欧米の雇用形態と日本の終身雇用とでは雇用形態が違うから、スウェーデン人も納得していると考える方もいるかもしれません

 

しかし2015年の公共ラジオSRで、スウェーデン技術者労働組合のトーマス・ビルドバーグ氏は「こうしたリストラは会社の危機ではなくただの長期的戦略である。会社は資金を新しいベンチャー事業に投入したいだけなのだ。そのため労働組合は会社と交渉をしている。我々は約2年ごとに大きなリストラの通知を受ける。しかしリストラではなく他の手段もあるはずだ。今後も労働組合は会社と交渉を続けていく。そして会社は度重なり何度も大きなリストラをしないことが重要であり、社員のスキルを向上させることに焦点を当てるべきだ」と語っています。

 

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私もスウェーデンで働いているため、その通りだと感じます。

 

実際にこうした頻発するリストラが起きると従業員の士気は大きく低下するのです。中には病気になったり、会社に来なくなる人さえでてきます

 

それというのもスウェーデン人や日本人にかかわりなく、みんな心がある人間であり、解雇通知を受けショックを受けない人などいないのです。

 

社会民主主義というご都合主義

多くの日本人はスウェーデンが社会民主主義と呼ばれ、社会主義的な民主・資本主義であるとされ、社会主義と民主・資本主義のバランスがとれていると考えているのではないでしょうか?

 

しかし実際のスウェーデンは、社会主義が都合よければ社会主義を唱え、資本主義が都合よければ資本主義を唱える、ご都合主義の国なのです

 

そのため大量のリストラを行うときは資本主義を語り、高額な課税をするときは社会主義的に平等だとそのときの都合で主義を使い分けています

 

実際に国民が社会主義の基盤である治安や教育、高齢者介護などの公共サービスに不満を募らせている中、2019年に政府は70万クローナ(約840万円)を超える、富裕者層へ課さられていた5%の税金を廃止する、とても資本主義的な政策決定をしました。

 

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スウェーデンは平等・人道主義を唱えており、公平で国民を守る人道的なイメージが強いかもしれません。


しかし実際のスウェーデンでは、現在のコロナ危機下でも政府は企業保護に力を入れますが国民の生命・健康保護の対策はいまだなく、企業も経営難となれば社員を守らず真っ先にリストラの実行をしているのです。


このように社会民主主義とよばれ、社会主義的で平等のイメージの強いスウェーデンですが、スウェーデンの政府企業は何よりもコストを重視する、実はとても資本主義的な国なのです。